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大きくて固いテーブルという、柔らかな光

やっと久しぶりに、エッセイに向き合える心になりました。

最近、とてもうれしかったことは……たくさんあるのですが、大きなテーブルを、もう1つ。

お部屋に迎え入れたことです。

わたしの本を、あとがきまで読んでくださった方はご存知かと思います。

わたしは原稿のほとんどを、ご近所の『Nem Coffee&Espresso』というカフェで書き上げています。

そして、このエッセイも。

 

そのカフェのオーナーご夫婦が、ある日、おもむろに大きなテーブルのサイズを図りだしました。

「今、前から欲しかった大きな一枚木のテーブルが売りに出ていたので……! 2つあるテーブルを、大きな1つのテーブルに前からしたかったから……僕はコーヒーを出さないといけないので、今、妻にそのお店へ行ってもらっているんですよ」

「え……じゃあ、この素敵なテーブルを1つ……わたしが買ってもいいのかしら?」

「本当ですか⁈ 佐川さんになら、喜んで!」

そんな秒殺のやりとりで、わたしが心密かにずっと。

この大きなテーブルとメイプルシナモンラテが好きだから、ここでいつも原稿を書いていた、その大好きなテーブルが我が家にやって来たのでした。

 

大きな家具が好き、安心

わたしは田舎の大きな家で育ちまして、父方が特に、大きなオーダー家具が好きだった影響を受けて、どんなに狭いお部屋に住んでも、大きな家具を置くと安心するのです。

父の書斎にあった、形見のヒノキの特注のテーブルはずっと持ち歩いて、一緒に生きてきました。

幼い頃に、書斎のヒノキのテーブルに備え付けだった大きな椅子に座っていたので、(子供で体が小さかったから、椅子が大きく感じていた空間の記憶なのだと思います) 大きな家具が好きなのです。

けれども、この大きなヒノキの机は高さが低めにデザインされているので、パソコンやお食事はしづらくて、お酒やお茶をゆっくり飲んだり、くつろぐためにふさわしい高さ。

『Nem Coffee&Espresso』の大きなテーブルの方が、原稿を書くにもお食事をするにもぴったりの高さなのです。

改めてキッチンのカウンターの辺りを図り直したら、きれいに収まるサイズ。

三日後、ご夫婦とアルバイトの女の子の3人が、ナショナル麻布マーケットの台車に乗せて、脚を分解して運び入れてくださいました。

(エレベーターの無い3階まで!)

晴れて、我が家のカウンターを外して、キッチン横でお茶を飲みながら原稿を書いたり、お食事をしたり、動画の撮影をしたり……の、素敵な空間が出来上がりました。

 

このテーブルには何の意味もありません

「2つある同じテーブルのうち、佐川さんがよく原稿を書いていた席の方のテーブルを持ってきたんですよ」

その一言をオーナーさんから言っていただいた時、わたしは泣きたくなりました。

オーナーご夫妻がとても気に入って、愛するお店に置いていた、美しいテーブル。

その美しさに気づいていたわたしも、その愛を受けとっているから、いつも愛についての原稿を書くことができたのです。

こうやって、ご夫婦の愛が作ってくださるコーヒーを通って、そのコーヒーが置かれたテーブルの愛に安心して……わたしは愛から原稿を書き、それをたくさんの方々が今、読んでくださっている……

その光のつながりが眩しくて、胸がいっぱいになったのです。

 

『奇跡のコース』のワークブックレッスンにある、

 

「このテーブルには何の意味もありません。」

「私は、この部屋で見ているものを何も理解していません。」

「私はこの鉛筆に過去だけを見ています。
 私はこの靴に過去だけを見ています。
 私はこの手に過去だけを見ています。
 私はあの体に過去だけを見ています。
 私はあの顔に過去だけを見ています。」

 

このレッスンが、胸に迫って来ました。

「テーブルという個体を、過去の所有だけに覆ってしまうと、こんなにも大きく固いテーブルでさえ、柔らかな愛の光となって自在に世界を動いていくことを止めてしまう……その愛の光を止めないで」

そんな想いが、声が、内側からわたしの心にやって来たからでした。

 

わたしはこの大きなテーブルで、愛する大切な人とお食事をします。

その光に包まれたお料理はなぜか、ほんの少しの調味料しか入れないのに、どれもとても美味しいと驚いてくれます。

わたしは大きくて固いテーブルという柔らかな光を、このお部屋に招き入れることができてほんとうによかった……そう想いました。

なぜならこの光のテーブルの上で、カフェのご夫婦とコーヒーとお料理と『奇跡のコース』。

そして、愛する人が安心して。

わたしに笑っている愛だけが、見えるようになったからです。

 

 

N

 

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